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横浜地方裁判所 昭和33年(わ)225号 判決

被告人 鈴木光利

主文

被告人を罰金二〇、〇〇〇円に処する。

右罰金を完納できないときは金二〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

押収に係る一〇〇弗紙幣一枚(昭和三三年地領第一六五号の一)は没収する。

訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は横浜市中区弥生町二丁目一六番地所在の共和商会事務所において不動産仲買業等を営み城田一夫を雇い入れて使用していたものであるが昭和三二年一二月二三日右事務所に於て被告人の留守中城田一夫が氏名不詳の女から米国通貨一〇〇弗につき三八〇円の割合で両替し買受けるに際し被告人から預つていた金員の内から三八、〇〇〇円を支払い以て被告人の財産に関し大蔵大臣の定めた基準外国為替相場によらないで取引したものである。

(証拠の標目)(略)

尚検察官は本位的訴因として被告人は城田一夫と共謀して昭和三二年一二月二三日頃横浜市中区弥生町二丁目十六番地所在の共和商会事務所に於て氏名不詳の女から両替名下に米国通貨一〇〇弗を一弗につき三八〇円の割合で合計三八、〇〇〇円で買受け以て大蔵大臣の定めた基準外国為替相場によらないで取引したものであると主張し共謀の点につき被告人の検察官に対する供述調書によれば被告人は城田一夫に六〇、〇〇〇円近くの金を渡し一寸出かけるが之を預つてくれこう云う女が来るかも知れないから話を聞いてくれと申し出たがそう云えば城田が女が来たら金を渡しておくので弗を買つてくれるものと思つた旨の供述記載があるのみで右以外に被告人と城田一夫との共謀事実を認めるに足る証拠がなく却て前記証人城田一夫の当公廷の供述及び同人の司法警察員並びに検察官に対する各供述調書謄本によれば城田一夫は不動産仲介業を営む被告人の使用人で判示日時場所で被告人より金六〇、〇〇〇円を預つていたところ氏名不詳の年令二十二、三才位細面で身長五尺一寸位パーマで長い赤いトッパーコートに黒ズボン、サンダルの様なものを履いた外人のオンリーのような女の人が来て主人に話をしてあるから、大丈夫間違いないから交換してくれと云われて弗は一弗三六〇円で公の相場がきまつているのでその相場にしたがわねばいけないことは判つていたが女が申す通り主人に話をきめてあると思い一〇〇弗紙幣一枚を三八、〇〇〇円で買受けた事実が認められるので城田一夫は被告人の使用人として被告人の金で本件犯罪を敢行したものと認めるのが相当である。

然して被告人と其の使用人城田一夫が共謀の上氏名不詳の女から両替名下に米国通貨一〇〇弗を大蔵大臣の定めた基準外国為替相場によらないで取引したとの前記本位的訴因と被告人の使用人城田一夫が被告人から預つていた金員で氏名不詳の女から米国通貨一〇〇弗を大蔵大臣の定めた基準外国為替相場によらないで買受け被告人の財産に関し取引したとの前記予備的訴因とは公訴の同一性ありと認められるので前記証拠により検察官の予備的訴因を認定した次第である。

(法令の適用)

外国為替及び外国貿易管理法第七条第六項第七〇条第七三条昭和二四年一二月一日大蔵省告示第九七〇号罰金等臨時措置法第二条により被告人を罰金二〇、〇〇〇円に処し右罰金不完納のときは刑法第一八条により金二〇〇円を一日に換算した期間労役場に留置し押収に係る米国紙幣一〇〇弗一枚は本件犯罪行為の組成物件で被告人の所有に属するから刑法第一九条第一項第一号第二項により没収し訴訟費用は刑事訴訟法第一八一条第一項本文により被告人の負担とする。

(裁判官 福島昇)

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